この記事では、確定申告をカンタンに済ませるための準備方法について、税理士が分かりやすく解説しています。
税理士のざいりです。
本業では、税理士として個人事業主の開業や融資のお手伝いをさせていただいています。お客様からよく受ける相談をまとめましたので、ぜひご参考にどうぞ!
この記事がオススメな人
- 確定申告をラクに終わらせたい人
- 確定申告の準備を効率よく進めたい人
- 書類の整理で困っている人
確定申告で書類の整理をしてるんです。それで、一気に片付けようと思ったのですが、まだぜんぜん終わらない…。間に合うかな。
ためてた資料の整理は大変だ。少しでも早く整理を進めておけばよかったね。
ほんと後悔してます・・・。来年こそは確定申告をサクッと終わらせる方法があればいいんですが。
個人事業主、フリーランスにとって毎年ビッグイベントである『確定申告』。
レシート、通帳などの書類の整理、会計ソフトへの帳簿作成が終わらない・・・。
確定申告書の書き方が分からない・・・。
徹夜でやればなんとかなる!(白目)」
確定申告はやることが盛りだくさんです。「もっと早く準備をしておけば良かった」、そう思っている人は多いのではないでしょうか。
「来年こそは早く終わらせる!」と思っても、申告が終わるとその決意も忘れてしまいます。
この記事では、税理士として毎年30件以上の確定申告をお手伝いする経験から、確定申告を効率よく終わらせるための準備方法について解説します。ぜひ参考にしてみてくださいね。
準備に時間がかかる作業
確定申告の準備ってなんで大変なんだろう?いったいどこに時間がかかるのか・・・。
確定申告の準備作業はいろいろあるけど、中でも「書類の整理」と「帳簿の作成」にとっても時間がかかるんだ。
確定申告の準備作業は大きく分けると3つの作業に区分でき、それぞれ次のようなものがあります。
書類にかかる作業一覧
- 領収証、レシートを保管する。
- 領収証、レシートの中からプライベートの支払い分を除外する
- 通帳を記帳する。
- クレジットカードの支払明細をまとめる
- クレジットカードでの支払い領収証と現金支払いの領収書を分ける
- 売上請求書、仕入請求書、外注請求書をまとめる。
帳簿作成にかかる作業一覧
- 会計ソフトに取引ごとに仕訳を登録する。
- 取引ごとに勘定科目を決め、分からなければネットや本で調べる。
- 書類を見て支払内容が分からなければ、手帳等から調べる。
- 12月が過ぎれば決算整理をして、1年間の決算をまとめる。
確定申告書にかかる作業一覧
- 決算内容を青色申告決算書に記入する。(白色申告の場合は収支報告書)
- 生命保険料控除、地震保険料控除の控除証明書を集める。
- ふるさと納税の寄付金控除証明書を集める。
- 確定申告書に所得、所得控除など情報を記入する。
- e-taxの準備をする。(電子申告でない場合、特別控除は55万円)
書類整理で時間がかかる原因
書類が多いから整理が大変です。領収書、通帳、振込用紙、クレジット明細、売上請求書、仕入請求書…。通帳3つにクレジットも3枚。全部で何種類の資料があるんだ。
預金通帳やクレジットカードいっぱい使ってるんだね。もしかして生活用と事業用のものを分けてないの?
まったく生活用と事業用でまったく分けてないです。事業もプライベートも一番お金が入っているところから払ってます。
改善すべきところがたくさんありそうだね・・・。
書類整理の中でも時間がかかる資料は、領収書(レシート)、通帳、クレジットカードです。
時間がかかる原因には次のような点があります。
- 領収書が複数の場所に保管されている(財布、机、車、事務所、自宅 など)
- 領収書を捨てている。
- 領収書内容が「お品代」になっており、何を買ったか思い出せない。
- 事業とプライベートの支払いが混ざった領収書が多く区別できない。
- 領収書を無くしたので探さなければいけない。
- 通帳の入金内容を思い出せない。
- 通帳の支払内容を思い出せない。
- 通帳記帳をしていなかったため、合計記帳になって取引が分からない。
- 経費を支払う時点で残高の多い通帳から支払を行っている。
- 通帳で事業とプライベートの入出金か混ざっているため区別が大変。
- クレジットカードで支払った領収書を保管していない。
- 現金払いとクレジット払いの領収書が混ざって保管されている。
少しでも当てはまる方は改善の余地がありそうだよ。
めちゃくちゃ当てはまってます。
税理士事務所のスタッフも同じように「時間がかかる原因」だと感じている部分だよ。だからこの点を改善できれば、作業効率は間違いなくアップするよ。
具体的な改善方法については、後の章で解説します。
会計帳簿の作成に時間がかかる原因
会計ソフトの入力ってすごく時間がかかるんですよ。勘定科目だってよく分からないし。
仕訳を登録するのは簡単そうで難しいよね。9割分かっても、1割の取引入力にすごく時間がかかることもよくある。
帳簿の作成とは、青色申告に必要な総勘定元帳、仕訳日記帳、出納帳、売掛帳、買掛帳などの会計帳簿を作る作業です。昔はノートなどの紙媒体の帳簿が広く使われていましたが、最近では会計ソフトを利用してパソコン上での帳簿作成が主流となっています。
帳簿作成に関する作業で時間がかかる点は、次のようなものがあげられます。
- 入力(確認)しなければいけない書類が多い。
- 入力前か、入力済みが分からなくなることが多い。
- 勘定科目を調べるのに時間がかかる。
- 何回も出てくる取引は、前回の仕訳から勘定科目を確認しなければいけない。
- 1取引ごとに1仕訳ずつ手入力しなければいけない。
- 簿記の知識があまり無い。
- 貸借対照表、損益計算書を見てもよく分からない。
時間がかかる多くの原因は『勘定科目の確認』と『1取引毎の仕訳入力』。ここを改善できれば効率アップが期待できるよ!
具体的な改善方法については、次の章で解説します。
書類整理や帳簿記帳の効率アップの工夫
時間がかかる原因はなんとなく分かったよ。でもどう改善していいかが見えない・・・。
それじゃあ、効率をアップする工夫について解説するね。めちゃくちゃ簡単な方法ばかりだからぜひ実践してね!
書類整理や帳簿記帳の効率をアップする工夫は次の5つがあります。
効率アップのためにやること
- 領収書を利用項目ごとに区分けする
- 事業専用の預貯金口座とクレジットカードを作る
- 書類にメモ書きをする
- 領収証をもらわない
- クラウド会計ソフトを利用する
それぞれ詳細を解説していきます。
領収書を利用項目ごとに区分けする
領収書はあとで整理しようとすると、枚数も多いうえ、いちいち領収書の中身を確認する必要があるため大変です。
そこで、最初から支払内容や月単位に分けて保管するようにしましょう。
具体的には、まずティッシュ箱のような小箱を5~6個用意します。
次にそれらの箱に、飲食代、ガソリン代、消耗品、交通費、税金等の項目を記載します。
準備はたったこれだけで、領収書をもらったら都度該当する箱に入れていくだけ。
どの箱に入れたらいいか迷うことないですか?
最初にルールを決めておくと、いちいち迷わなくて済むよ!
分類するルールを紙に書いて、箱に貼ってだけで迷うこともありません。
例えば、ルールは次のような感じに設定します。
・外食 → 飲食代の箱
・電車代 → 交通費の箱
・ETC → 交通費の箱
・駐車場 → 交通費の箱
・所得税 → 税金の箱
えっそれだけ!?めっちゃカンタンじゃないですか。
疑ってるかもしれないけど、たったこれだけで準備が捗る。帳簿記帳も、箱ごとに行えば勘定科目が同じだから効率あがるよ。
事務所の税務スタッフも記帳前の準備作業として、領収書の分類を行っています。
支払内容が同じ(=勘定科目が同じ)書類をまとめておくことで、いちいち勘定科目を考える手間がなくなり、効率アップにつながっています。
経費に入れてよいか迷う領収書はどうすればよいですか?
迷った領収書をまとめる小箱を作ろう。いちいち調べていると時間がかかるから、あとでまとめて調べれば効率アップだよ。
事業専用の預貯金口座とクレジットカードを作る
預貯金口座とクレジットカードは、『事業専用』のものをつくることをオススメします。
新しく作るの面倒ですよ。
面倒なのは最初だけ。今後の手間を考えると、事業専用の口座などを作ったほうが良いよ。
事業専用の預貯金口座、クレジットカードを作ることは、次の3つのメリットあります。
事業用を作る3つのメリット
- 準備にかかる時間を短縮できる
- 事業が儲かっているか把握しやすい
- 税務調査で指摘されにくい
良い感じのメリットが多いですね。詳しく教えてください!
メリット① 準備にかかる時間を短縮できる
事業専用の預貯金口座、クレジットカードを使うことで、準備にかかる時間を短縮することができます。
なぜなら、事業で管理しなければいけない書類が減るからです。
管理する書類が減る?
生活と事業用が混ざると、生活用の口座からも事業用の出金がある。だから、すべての口座を確認しないと正確な経費が分からないよね。
そうなんです。通帳を見返して、支払いが漏れた!と思ったら別口座から支払っていたということも多々あります。
そうなる理由は、事業用と生活用でお金の管理ができてないから。事業専用の口座があれば、そこからお金を払うだけだから管理も楽になる。
管理する書類が減ると、整理する書類や帳簿に記帳しなければならない書類が減ります。
その結果、帳簿作成までの準備にかかる時間を短縮することができます。
また、事業と生活の区分が不明確だと・・・
「この振込は事業に関係あるものだった?」
「振込先が印字されてないから事業の経費か判断できない・・・。」
「クレジット払いで買った子供用品を誤って経費に入れてしまってた。」
このように、売上なのか、必要経費に該当するかといった判断で悩むかもしれません。
一方、事業用の口座、クレジットは、取引はすべて事業に関するもののため、入出金を見て後から事業か生活か判断する必要はありません。
(もちろん事業用のクレジットでプライベートの買い物をした場合は別ですが)
クレジットカードは、明細から支払先・金額を確認できるから、現金払いに比べて支払いの管理がしやすいメリットもあるよ。
メリット② 事業が儲かっているか把握しやすい
事業用の預貯金口座があれば、事業の損益状況(儲かっているかどうか)がすぐに把握できます。
儲かっているかどうかを判断する術として最もカンタンな方法。
それは『お金がどれだけ増えているかどうか』ということ。
『儲かっている』=『利益』じゃないの?
もちろん利益もあってるけど、お金の視点からも見ることができる。だって儲かっていないとお金は増えないよね?
そう言われてみれば納得です。
お金を増やすには、事業で利益をあげるか、銀行から借りるか。だから銀行から借りていなくてお金が増えたら儲かっていると考えた方が自然だよね。
事業の儲けを測るためのお金の増減。
はたして、事業と生活の入出金が混ざる預貯金口座で管理ができるでしょうか。
次のように判断を誤って、利益判断や納税予測を見誤る可能性があります。
残高が減っていても・・・
・生活用の光熱費などの支出が多かった。
・親戚の子供たちへのお小遣いとして引き出した。
・投資資金へ回していた。
残高が増えていても・・・
・生活用の支出が少なかった。
・キャッシングで増えた。
事業用の預貯金口座であれば、そこにあるお金はすべて事業専用です。
残高が減ってれば儲かってないし、反対に増えていれば儲かっていることと把握できます。
事業を営むうえでお金の管理は大切です。
増えてるのか、減ってるのか分からないということは、事業を継続するうえで難しいです。
安定した個人事業の運営をするためにも、事業用口座を作って事業資金を管理できる状態にしておくことをおススメします。
メリット③ 税務調査で指摘されにくい
事業用と生活用を区分することは、税務調査で指摘を受けるリスクを抑えることができます。
なんで税務調査で指摘されにくくなるの?
事業者に対する税務調査官の印象が変わるんだよ。事業用を準備している方がちゃんとしているように見えるよね。
確かに私用と事業を分けていない人は、プライベートの支払いを経費に入れてそうな感じがしますね。
印象が悪いければ、調査官は追及するかもしれない。だから事業用を作ることで指摘リスクを抑えられるかもしれないんだ。
個人事業主の税務調査では、プライベートの支払いが経費に含まれていないかチェックされます。
法人と違って、個人事業主は事業者とプライベートでそれぞれ同じ人間です。
私用の支払いを経費に水増ししたり、売上をプライベートの入金としてごまかしたりといったことが簡単にできてしまいます。
簡単にできるからこそ、税務調査はそういった点に強く目が向けられるのです。
仮に今は税務調査がなくても、税務署は数年泳がせたあとに調査にやってきます。
調査での是正によって本税に加えペナルティの税金も多額に請求されるのが、個人事業主の税務調査でよくあるパターンです。
もし故意に水増しするつもりはなくても、私用の支払いを誤って経費に入れてしまうかもしれない。そういったことを防止するには、事業専用を作るべきだよ。
銀行口座とクレジットカードにおいて事業用の入出金を明確にすることで、売上漏れや経費の過大計上は起こりにくくなります。
『お金の管理ができている人』といった税務署へのアピールになるため、税務調査に向けた準備として効果があります。
事業用の預貯金口座とクレジットカードをすぐ作ります!
書類にメモ書きをする
領収書や通帳には取引内容が分かるよう都度メモ書きをしておこう。
領収書や通帳にメモを書いていいんですか?
全然大丈夫だよ!むしろメモ書きがあると、書類整理や記帳の際にとっても楽になるんだ。
領収書や預貯金通帳に、何の支払いかをメモ書きを残しておくこともおススメです。
なぜなら、あとで支払い内容を確認しやすいため、帳簿記帳の効率アップの効果も期待できます。
領収証をもらわない
お店で支払いをしたとき、レシートだけでなく領収証をもらう人が多いと思います。
これからは領収証をもらわないでください。
領収証がなくて大丈夫なの?
レシートがあれば大丈夫!!むしろレシートの方が大事だよ。
お店で領収証をもらったらレシートは捨てる方が多いのです。
しかし、実はレシートの方が大切な書類なのです。
「お品代」などとまとめられ、領収証だけでは購入したものの内容が分かりません。
購入したものが分からないと、必要経費に入れて良いものかどうかの判断もできません。
そのため、領収証は税務書類としては意味ありません。
領収証をもらわずに、レシートをもらってサクッとお会計を終わらせましょう。
わざわざ領収証をもらってたあの時間はムダだったのか・・・。
次からはレシートだけで大丈夫だからね。
クラウド会計ソフトを利用する
会計ソフトへの帳簿記帳が好きじゃないんですよね。簿記がよく分からないし、時間もかかるし。
書類整理は時間があればできるけど、帳簿は簿記の知識も必要だね。でも最近のクラウド型の会計ソフトは、口座連携できるから知識があまり無くても大丈夫だよ。
会計ソフトへの帳簿記帳が好きじゃないんですよね。簿記がよく分からなえっ!?めっちゃすごいじゃないですか。詳しく教えてください!
会計ソフトにはインストール型とクラウド型の2種類があります。
インストール型、クラウド型どちらも良さがありますが、オススメは『クラウド型』です。
クラウド型のメリットは3つあります。
メリット① 銀行口座、クレジットの連携が充実している
クラウド型の方が銀行口座やクレジットカードなどの連携サービスが充実しています。
最初に連携の設定すれば、あとは手作業による仕訳入力無しで、通帳取引などのデータを会計ソフトに取り込むことができます。
データを取り込むだけで自動で仕訳が完成されます。
メリット② スマホ画像から仕訳を登録できる
スマホで撮影したレシートの画像から、会計帳簿へ仕訳登録ができるサービスがあります。
仕訳作成に関する簿記知識が無くても、カンタンに仕訳を登録することができます。
メリット③ 複数のパソコン、スマホから閲覧・操作ができる
クラウド型の会計ソフトの場合、インターネットに接続できれば、どのパソコンやスマートフォンからでも閲覧・操作することが可能です。
クラウド型の会計ソフトはインターネット上のWEB媒体で使用します。
そのため、外出先からや移動中でもカンタンにスマホ等でチェックできるため、利用しやすさにメリットがあります。
一方でインストール型のソフトは、インストールしたパソコンのみ閲覧・操作ができます。
そのため、外出先などで利用する場合は、インストールされたパソコンを持ち運ぶ必要があります。
もし複数のパソコンで利用する場合には、ライセンス料が別にかかります。
クラウド型とインストール型のソフトは次のようなものがあります。
クラウド型
会計ソフト | 利用料金(個人) | 申告対応 |
マネーフォワード クラウド確定申告 | 800円/月~ 無料おためし期間30日 | 青色・白色 |
freee会計 | 980円/月~ 無料おためし期間30日 | 青色・白色 |
弥生会計の青色申告 オンライン | 年間8,800円 無料おためし期間1年 | 青色 |
弥生会計の白色申告 オンライン | 無料 | 白色 |
インストール型
会計ソフト | 利用料金(個人) | 申告対応 |
やよいの青色申告 (弥生会計) | 13,200円~ 無料おためし期間1年 (セルフプランのみ) | 青色・白色 |
みんなの青色申告 (ソリマチ) | 10,780円 無料おためし期間30日 | 青色・白色 |
かんたん!青色申告 (MJS) | 7,920円 無料おためし期間30日 | 青色・白色 |
無料で試せるおためし期間もありますので、何個か利用して気に入ったものを使うことをオススメします。
会計ソフトは一度使い始めると他ソフトへの移行が大変。だからおためし期間で何種類か利用して、自分に合ったものを見つけてね。
まとめ
この記事では、確定申告の準備をカンタンに済ませるために、書類整理や帳簿への記帳に関する工夫について解説しました。
準備のうち、時間がかかる作業は主に次の2つがありました。
- 領収書や通帳などの書類整理
- 会計帳簿への記帳
しかし、書類整理は年間の所得を計算するうえで必ず行いますし、帳簿は青色申告の特典である65万円特別控除の要件なので絶対に避けられません。でも、書類整理や帳簿記帳はとても大変ですよね。
そこで、書類整理や帳簿記帳の効率をアップさせる工夫として、次の3つを解説しました。
- 領収書を利用項目ごとに区分けする
- 事業専用の預貯金口座とクレジットカードを作る
- 書類にメモ書きをする
- 領収証をもらわない
- クラウド会計ソフトを利用する
上記の工夫を行えだけで、確定申告の準備はすごく効率化できると思います。だまされたと思って一度試してみてください。
あなたの確定申告の準備がスムーズに進むために役立ててもらえればと思います。