この記事では、フリーランス、個人事業主、自営業者が確定申告で支払う税金(所得税や消費税)を簡単に支払う方法として、銀行引落しにする手続きについて解説しています。
税理士のざいりです。
本業では、税理士として個人事業主の開業や融資のお手伝いをさせていただいています。お客様からよく受ける相談をまとめましたので、ぜひご参考にどうぞ!
この記事がオススメな人
- 確定申告の税金を納付書を使って支払いしている人
- 納付のために税務署や銀行に行くのが面倒と思っている人
- 税金の支払い期限を遅らせたい方
確定申告の税金を納付に行くのが面倒なんです。銀行は混んでいるじゃないですか。
納付書を使って納付してるんだ。それは手間がかかるよね。
確定申告の税金を納付に行くのが面倒なんです。銀行は混んでいるじゃえっ納付書を使わずに納税できるんですか!?どうやってやるんですか?
確定申告の税金は、3月15日(消費税は3月31日)までに納付書を使って税務署や銀行等の窓口で支払わなければいけません。
税金を支払いに行く際にいつもこう思ってました。
税金を払うためにわざわざ役所に行くのがまじで面倒
銀行はいつも混みすぎで時間がかかる(イライラ)
衛生的にも混んでるところに行きたくない
通信代やネットショッピングのようにインターネットで振込みにするか、銀行口座の振替で引き落としてくれればいいのに。私はずっと思っていました。
じつは、窓口に行かずに確定申告の税金を支払う方法があるんです。その方法とは『振替納税』 です。
振替納税とは、確定申告の税金を銀行預金からの引落しによって納める方法です。そのため、納付書を準備してわざわざ納付に足を運ぶ必要もありません。
さらに振替納税には、支払いの期限を遅らすことができるメリットもあります。
この記事では、振替納税を利用して税金を支払う方法について、税理士が分かりやすく解説します。
振替納税??聞いたこともなかったです。
この振替納税、メリットがいっぱいあるんだ。詳しくは次の章以降で説明するね。
おすすめの支払い方法 ー 振替納税とは?
振替納税とは、銀行、郵便局など金融機関の預貯金口座から、支払の期限になったら税金が自動的に引き落とされて納付する制度です。
そのため、納付書を準備する必要はなく、確定申告で支払うこととなった税金が振替納税の引き落とし期日になれば、勝手に預貯金口座から引き落とされます。
振替納税とは?
振替納税とは、税金をおさめる納税者自身の名義の預貯金口座からの口座引落しによって国税を納付する手続です。税金の支払いを銀行からの口座引落しにする手続きのことを言います。
振替納税は、銀行の通帳から引落しによって、確定申告の税金の支払いができる制度のことだよ。
税金は納付書で支払うものと思ってました。そんな裏ワザがあったとは・・・。
裏ワザでもなんでもないよ。国税庁も積極的に振替納税を進めてる。
税金の支払い方法
振替納税を解説する前に、国税(所得税、消費税)の支払い方法について説明します。納付方法は、次の5種類があります。
・納付書を使って税務署や銀行窓口で納付する
・振替納税で納付する
・e-taxで納付する
・クレジットカードで納付する
※決済手数料がかかります。
・QRコードを使ってコンビニで納付する
※納付できる金額は30万円以下です。
※納付できないコンビニもあります。
国税庁のホームページでも納付方法が紹介されています。
振替納税ができる税金(所得税、消費税)
振替納税をすることができる税金の種類や限度額は、国税庁のホームページに記載されています。
ご利用が可能な税金の種類等
利用可能税目(税金の種類)次の税金でご利用できます。
◇ 申告所得税及び復興特別所得税
・期限内に申告された確定申告(3期)分及び延納分
・予定納税(1期、2期)分
◇ 消費税及び地方消費税(個人事業者)
・期限内に申告された確定申告分及び中間申告分
利用可能額
制限はありません。
引用 国税庁 [手続名] 申告所得税及び復興特別所得税、消費税及び地方消費税(個人事業者)の振替納税手続による納付
簡単にまとめると、振替納税を利用できる税金は次のとおりです。
振替納税ができる税金
- 確定申告で支払う3月15日期限の所得税
- 年の途中に2回支払う所得税の予定納税分
- 確定申告で支払う3月31日期限の消費税
- 年の途中で支払う消費税の中間納付分
消費税の支払いは、消費税を納付する義務がある場合のみが対象です。また所得税の予定納税と消費税の予定納税は、前年の申告税額によって有無が決まります。
消費税を支払う個人事業者とは?
2年前の課税売上高(消費税がかかる売上)が1000万円を超えている場合は、消費税を納める義務があります。例えば、2020年の売上高が1300万円の場合は、2022年分の確定申告では消費税を支払わなければいけません。
また振替納税をするには手続きが必要です。手続き方法や書類の書き方については、後の記事で解説します。
振替納税のメリット
振替納税をすることのメリットは3つあります。
- 税金の支払いを簡単に済ますことができる
- 税金の支払い漏れを防止できる
- 納税資金の準備の時間がとれる
税金の支払いを簡単に済ますことができる
納付書を準備せずに、銀行や郵便局からの口座の引き落としだけで納税できることが、振替納税の最大のメリットです。
納付書を使う場合、わざわざ時間をかけて税務署や銀行の窓口へ行かなければけいけません。銀行の窓口はいつも混んでるし、税務署も確定申告の時期になるととても混雑しています。税金の支払いだけのために時間もかかるしストレスも溜まる・・・。
その点、振替納税では窓口に行く必要がないため、時間を節約をすることができます。
いちいち手続きの順番待ちも不要なので、ノンストレスで税金の支払いをすることができます。
税金の支払い漏れを防止できる
振替納税の口座引落日は事前に決まっていて、国税庁のホームページで日程が公表されています。
納税の際に何も手続きしなくても、予定日がくると自動的に預貯金口座から納税額が引き落とされます。
もし忙しくて、支払い期限を忘れていたとしても大丈夫です。自動的に引き落としされるので、支払いを忘れるということはありません。
納付書の場合、手続きを忘れたり、体調が悪くて窓口に行けなかったりと、当日に納付できない危険がありますが、振替納税ではそのような不安はありません。
納税資金の準備の時間がとれる
振替納税の場合、納付書のときよりも支払いの期限を遅らせることができるよ。だから納税資金を準備する時間をゆっくり取れるんだ。
確定申告の所得税は、原則として3月15日までに支払いを行わなければいけません。一方、振替納税での税金の支払い日(預貯金口座からの引落日)は、所得税、消費税とも約1か月遅い日で設定されています。
令和3年分の振替納税のスケジュールも次の日程が公表されています。
[令和3年分申告所得税及び復興特別所得税]
納期等の区分 | 納期限(法定納期限) | 振替日 |
予定納税第1期 | 令和3年8月2日(月) | 令和3年8月2日(月) |
予定納税第2期 | 令和3年11月30日(火) | 令和3年11月30日(火) |
確定申告 | 令和4年3月15日(火) | 令和4年4月21日(木) |
確定申告延納 | 令和4年5月31日(火) | 令和4年5月31日(火) |
[令和3年分消費税及び地方消費税]
納期等の区分 | 納期限(法定納期限) | 振替日 |
確定申告(原則) | 令和4年3月31日(木) | 令和4年4月26日(火) |
消費税の中間納付も振替納税が可能です。
納付回数に応じて期限が異なりますので、国税庁ホームページ『中間申告分の納期限及び振替日について』を参照ください。
納付を遅らせることで、納税資金の準備する時間をとることが可能です。
確定申告書を作成した時点ではじめて納付する税金の金額が決まります。もし確定申告書の作成が3月15日までかかったら、その日中にその税金を支払う必要があります。支払いができないと延滞税などのペナルティがかかります。
もし支払うお金が足りなかったとしたら? 考えただけでもゾッとしますよね。
確定申告した日から税金の支払いの日まで時間があると、余裕を持ってお金の準備ができますので、資金繰りの面でも振替納税には大きなメリットがあります。
納付期限よりも遅いけど、延滞税などかからないんですか?
振替日に予定どおり引落しされれば、延滞税はかからないよ。
振替納税の注意点
前章で説明したように、振替納税には多くのメリットがありますが、一方で気を付けるべき点もあります。
この章では、振替納税をする場合の注意点について解説します。
通帳の残高不足の場合は支払いできない
光熱費や家賃の支払いと同じく、通帳の残高が足りなかった場合は、税金の引き落としをすることができません。引落しができなかった場合、再振替は行われないため、納付書を使って納付しなければなりません。
通帳残高と税金の金額を確認し、引き落とし日の前日には必ず残高を確認しましょう。もし残高が足りない場合は、他の預貯金口座からお金を移して納税額以上の残高がある状態に必ずしておいてください。
引き落としができないと、また納付書になってしまうんですね・・・
引き落としできない場合は延滞税がかかる
納付書を使って納付しなければいけないだけなら全然マシだよ。振替納税できないと、元々の納付期限から延滞税がかかってしまうんだ。
引き落としができなかった場合、税金の支払いが遅れたことによるペナルティで延滞税がかかります。
なお、支払の方法が振替納税から通常の納付書の方法に切り替わります。そのため、延滞税は、振替日ではなく当初の納付期限(所得税は3月15日)から計算されることになります。
そのため、引落日を忘れないように手帳やカレンダーにメモしておきましょう。
また預貯金口座を複数お持ちの方は、どの口座から引き落としされるのか必ず事前に確認してください。
振替納税できないと、延滞税のダメージが大きい。残高不足には十分注意しよう。
振替納税がおすすめな人、おすすめでない人
振替納税が向いている人と向いていない人をまとめました。
振替納税がおすすめな人
- 税金の支払い手続きを簡略化したい方
- 確定申告の手間を減らしたい方
- 引落日や預貯金残高の管理ができる方
- 納税資金の準備の時間がほしい方
- 確定申告結果がまとまるのが期限ギリギリになる方
- 予定納税(中間納付)の期限を忘れがちな方
振替納税をおすすめしない人
- 自分のタイミングで納付手続きをしたい方
- 預貯金口座の残高不足が心配な方
- クレジットカードで納付したい方
振替納税をするための手続き
振替納税するには手続きが必要だよ。カンタンだから安心してね。
振替納税は、「振替依頼書」を税務署に提出することで手続きします。
振替依頼書の提出方法は、次の2つのパターンがあります。
- 書面による提出(窓口または郵送)
- e-raxによる提出
振替依頼書
振替納税をしたい税金(所得税・消費税)の納期限までに、振替依頼書を税務署または金融機関に提出します。
例えば、令和4年3月15日が納付期限の令和3年分所得税であれば、その3月15日より前に提出していれば振替納税が適用されます。
振替依頼書(預貯金口座振替依頼書兼納付書送付依頼書)は次のような様式です。
引用:国税庁『【手書用】預貯金口座振替依頼書兼納付書送付依頼書(PDFファイル/156KB)』
振替依頼書の様式や記載要領は、国税庁ホームページでダウンロードすることができます。
書面による提出(窓口または郵送)
提出先
納税地を所轄する税務署または振替依頼書に記載した金融機関
提出期限
振替納税を利用する国税の納期限
対象税目
・申告所得税及び復興特別所得税(=所得税)
・消費税及び地方消費税(=消費税)
書面提出の場合の注意点
窓口提出や郵送提出の場合は、必ず原本と控えを2部作成しましょう。
税務署に提出した申請書は税務署が回収するため、あなたの手元には戻ってきません。
そのため、あとで提出したかを確認できるよう控えを必ず準備しましょう。
必ず原本と控えの2部を提出し、控えにも受領印を押してもらいましょう。
控えは原本をコピーしたものに「控」の印を付けるだけで大丈夫です。
また、郵送で提出する場合は、切手を貼った返信用封筒もいっしょに郵送しましょう。
返信用封筒が無いと、控えを送り返してもらうことができません。
e-taxによる提出
パソコン、スマートフォンからe-taxにて入力画面に沿って必要事項を入力し、振替依頼書をオンライン提出ができます。
振替依頼書のオンライン提出の流れは国税庁のホームページで詳しく解説されています。
まとめ
この記事では、個人事業主が確定申告で支払う税金を口座引き落としにする振替納税制度について解説しました。
振替納税のメリットをまとめると、次の3つです。
- 口座引き落としのため、税務署・金融機関の窓口での納付がいらず手間が減る。
- 自動的に引き落としされるため、納付漏れを防止できる。
- 納付期限が1ヶ月遅いため、納税資金を準備する時間を確保できる。
一方で、次のようなデメリットもありました。
- 残高不足の場合は再振替がないため、納付書で納付しなければならない。
- 引落できない場合は、本来の納付期限から延滞税がかかる。
「残高不足が怖い」「振替日を覚えられない」という方でない限り、振替納税は絶対に利用すべきです。。
もしあなたがまだ納付書で納付しているなら、振替納税の手続きを早めにされることをオススメします。
振替納税をすれば、簡単すぎていつもの納付書での納付に戻れないよ!