飲食店運営の話

飲食店の倒産|税理士が見た廃業しやすい個人経営の飲食店の特徴3選

2022年2月20日

ざいり
ざいり

税理士のざいりです。
本業では、税理士として個人事業主の開業や融資のお手伝いをさせていただいています。個人経営の飲食店で経営がうまくいっていない人の特徴をまとめましたので、ぜひご参考にどうぞ!

2020年3月以降、コロナウイルス関連の影響によって飲食店の経営は非常に厳しい状態が続いています。独立開業を断念した人も多いのではないでしょうか。

私は税理士として、飲食店を開業を検討している方々から、お店の開業や法人設立、創業融資のお問い合わせを受けています。コロナ流行前と比べてみると、飲食店、特にお酒を扱う居酒屋さん、バーの開業をする方は減少しています。

また、コロナ流行以前より飲食店向けの創業融資が難しくなっています。その理由は、コロナの終息が見えない状況のため、融資の返済ができるかという金融機関の審査が厳しくなっているからです。

この記事では、私が税理士として対応してきた飲食店の方々から、経営がうまくいっていない方々の開業時の特徴をまとめました。

今回紹介する特徴に該当しないようにすれば、開業初期での廃業リスクを抑えることができます。

飲食店を開業される際のお役に立てれば幸いです。ぜひこの記事を参考にしてください。

飲食店の廃業率

飲食店の廃業率は、一般的には次のとおりと言われています。

開業1年以内:30%が廃業
開業2年以内:50%が廃業
開業3年以内:70%が廃業

この廃業率はあくまで一つの目安ですが、開業からたったの3年で7割もの飲食店が廃業していると言われています。

帝国データバンクの発表によると、2021年は468件、2020年は780件の飲食店が倒産に追い込まれています。コロナ関連の給付金や協力金等の支援策はあるものの、お店の維持するまでの支援が受けられない現状です。

特に開業して間もない飲食店は支援策すら受けられずに倒産に至ってしまうケースもあります。

倒産しやすい飲食店の特徴3選

前述のとおり、私は税理士として、飲食店の開業前の方の相談から開業後のサポートをさせていただいています。私が関わった方の中には、経営がうまくいかず開業から短い期間で廃業に至った方もいらっしゃいます。

廃業した方の特徴を大きくまとめると次のようになります。

  • 初期費用が大きい
  • 店舗の家賃が高い
  • 広告をしない

初期費用が大きい

飲食店の主な初期費用とは次のようなものがあります。

・店舗の契約にあたっての保証金、敷金、礼金

・店舗の外装工事

・店舗の内装費(電気、配管、壁、床など)

・厨房設備(冷凍庫、冷蔵庫、水回り、調理台、炭火など)

・什器、備品

・車(仕入用、配達用)

・食材の仕入費用

・広告費用

初期費用が大きい方は、店舗保証金、内外装費、店舗設備が高い傾向にあります。資金さえあれば、良い店舗にしようと思えば上限なく店舗環境を充実させるできるからです。

自宅もお金さえあれば広い部屋、きれいな部屋、設備がそろった部屋、駅近の部屋に住みたいですよね。それと同じでお店も資金があれば上限なく手をかけることができます。もちろん良いお店にするため、ある程度の費用がかかるのは仕方ないでしょう。

自己資金で賄うことができればよいですが、通常は自己資金では足りず、日本政策金融公庫などの金融機関から融資を受けることが一般的です。

日本政策金融公庫で借入をした場合、設備にかかる資金の返済期間は大体10~15年。
例えば、店舗保証金で200万円(家賃の3ヶ月~半年分)、内外装費で1000万円、厨房設備で800万円をかけたとします。

2000万円の借入をした場合の返済額はいくらになるのでしょうか?

15年返済:年間133万円、月11万円
10年返済:年間200万円、月16万円

10年返済の場合、16万円の返済分を売上で稼ごうとすると、粗利益率30%で約53万円の売上が必要です。

開業3年以内に倒産してしまう方は、金融機関の借入返済分を売上で賄えず廃業することがほとんどです。

店舗の内外装や設備を立派にするのは、お店が順調に回転してからで全然遅くありません。その店舗、その設備が本当に必要かを考え、最初はスモールスタートを心がけましょう。

店舗の家賃が高い

倒産しやすいお店の特徴の2点目は、店舗の家賃が高い ということです。

例えば、駅前の一等地に、家賃30万円で店舗を借りたとします。

居抜き物件でない限り、内装工事、設備工事があってやっとオープンに至るため、契約してから2ヶ月くらいは間が空いてしまいます。オープンまでの期間も家賃がかかるため、売上はないけど家賃60万円を払わなければいけません。

また家賃30万円を賄うための売上はいくら必要でしょうか。

粗利益率30%とすると、必要な売上は100万円です。営業日が25日とすると、1日あたりの売上が4万円、客単価が1000円のお店なら1日40人の計算になります。

このシミュレーションでは「家賃を賄うための売上」だけでしたが、実際は人件費、光熱費、広告費等の固定費が他にかかります。仮に家賃以外の固定費が毎月30万円だったとすると、家賃を含む固定費60万円を稼ぐには、200万円の売上(60万÷30%)がないとお金は減ってしまいます。

家賃等の維持費から売上高がいくら必要なのかをシミュレーションして、店舗物件を選ぶことをおすすめします。

駅前の一等地は繁盛する可能性が高いため選びたくなる気持ちはよく分かります。しかし、実際はそう甘くありません。駅前でも、商店街でも、1階でも2階以上でもお客さんの呼び込みに苦労している方がたくさんいます。

最初はとにかく維持費を抑えることを第一に考えましょう。

広告をしない

広告を打たないお店は閉店しやすい です。

広告を打たないことってあるの?と疑問を持った方も多いと思います。

広告を打たない人は一定数います。
それは独立する前のお店や会社で地位の高かった方に多いです。そのような方は、広告をしなくても味が良ければお客さんは来ると思っている人がほとんどです。

しかし実際は違います。そもそも広告してないのでお客さんがお店に行きません。お店に行かないので味を知ってもらうこともできないため人気が出ることはありません。

自分の調理技術にプライドを持つことは大切ですが、最初に広告を打ってお店(料理、商品など)を知ってもらうことを考えましょう。

番外編-貯蓄しない人

儲けた利益を全部使ってしまう人は、当たり前ですが倒産リスクが非常に高くなります。なぜなら、お店の儲けすべてが個人経営者のお金ではないからです。

儲けた分は確定申告で所得税を支払わなくてはいけません。また、翌年には儲けた利益が考慮された住民税、国民健康保険などの支払いもあります。

儲けた人が陥る最も大きな失敗は、先のこと(将来必要になるお金)を考えずに使ってしまうことです。いざ必要なときにお金が無いので、金融機関からの借金や税金滞納をしてしまい、そこから立ち直れず倒産してしまう方は少なくありません。

「儲け=自分のお金」ではない ことを意識しておきましょう。

まとめ

この記事では、税理士目線で倒産しやすい飲食店の特徴を紹介しました。

まとめると、次のような場合は廃業リスクが高まります。

  • 初期費用が大きい
  • 店舗の家賃が高い
  • 広告をしない

倒産しやすい人と同じことをしなければ倒産リスクを減らすことができます。
本記事で紹介した方を反面教師として、開業の準備を進めましょう。

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  • この記事を書いた人

ざいり

税理士/行政書士/FP。神奈川県鎌倉市で税理士・行政書士事務所を運営しています。スモールビジネスを営む個人事業主さんや中小企業さんを中心にお手伝いさせていただいています。 このブログでは、個人事業主として開業する人や会社から独立する人、法人化をする人に向けて、開業後の事業を営むうえで悩みやすいことについて分かりやすく解説します。 趣味は歩くことです。外をブラブラ散歩して、町の変化や流行を発見するのが大好き。

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