この記事では、個人事業主や副業の会社員が行う確定申告について、青色申告をするメリット、デメリットを解説しています。
税理士のざいりです。
本業では、税理士として個人事業主の開業や融資のお手伝いをさせていただいています。お客様からよく受ける相談をまとめましたので、ぜひご参考にどうぞ!
この記事がオススメな人
- 個人事業主、フリーランス、副業をしている人
- 青色申告の適用を受けたい人
- 青色申告のメリットデメリットを知りたい人
開業届の準備がやっと終わった!その他にも提出する届出はあるのかな?
今度は「青色申告」を受けるための準備をしよう。青色申告って聞いたことあるかな?
個人事業主になると確定申告が必要なんですよね。青色と白色で何が違うのかな? 違いがないなら、簡単な方がいいな。
いやいや絶対に青色申告だよ。青色申告を選ぶべき理由を解説するね。
白色申告と青色申告は聞いたことがあるのではないでしょうか。確定申告の方法のことをいいます。
先日、ざいりの事務所に新規にいらっしゃったお客様(個人事業主を何年かされている)から衝撃の相談を受けました。
「今までずっと白色申告です」
過去の確定申告書を拝見すると、事業所得の利益が出ていない年もあれば、直近では数百万円の利益が出ています。
これで白色申告とは「もったいない」のひとことにつきます。
ひと目でもったいないって分かるんですか!?
青色申告なら利益が出ないと損失の繰越しができ、利益が出ると特別控除が受けられる。利益の有無に関係なく、青色申告はメリットがあるんだ。
個人事業主やフリーランスの所得税の確定申告には、青色申告と白色申告という2種類があります。
青色申告と白色申告、それぞれ名前は聞いたことがある人も多いでしょう。いったい何が違うのでしょうか。
一言でいうと、青色申告は税金を少なくできる節税メリットがたくさんあります。
この記事では、青色申告のメリットやデメリットについて解説しています。青色申告をしたいと考えてる方はぜひ参考にしてくださいね!
1、青色申告と白色申告の違い
白色申告とは?
白色申告とは、個人事業主、副業、サラリーマン、アルバイト・パート等の会社員など、立場に関係なく関係なくだれでも行うことができる申告方法です。
個人事業、不動産収入、給料、年金、株を売った利益、配当金収入、土地建物等の不動産を売った利益・・・。所得税の確定申告ではたくさんの収入をまとめて申告することになります。
これらの収入内容に関わらず、確定申告をしようとすると、原則的には白色申告で行うこととなります。白色申告は届出などの必要は特にありません。白色申告が基本の状態だからです。
何もしなければ最初は必ず白色申告になるよ。
青色申告とは?
青色申告とは、事業活動による収入、不動産収入等の一部の収入について、確定申告での税金計算上の優遇が受けられる制度のことです。
ひと言でいうと、白色申告よりも青色申告の方が税金が少なくなります。
税金が少なくなる!?めっちゃ良いじゃないですか!
ただし、白色申告のように誰でも受けられるというわけでなく、受けられる所得が限定されています。例えば、事業所得や不動産所得については青色申告のメリットがありますが、サラリーマンの給与所得や仮想通貨などの雑所得には関係ありません。
なるほど。個人事業主として独立した僕は青色申告を受けた方が良さそうですね。
所得とは?
収入から必要経費を引いた残りの金額のこと。
個人事業主は「売上-必要経費-青色申告特別控除」の金額をいい、
会社員は「給与額面合計-給与所得控除」の金額をいいます。
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青色申告が絶対いいよ。でも青色申告を受けるためには要件があるんだ。
青色申告をすると「複式簿記による帳簿作成」など、経理上の手間や必要な準備が増え、簿記の知識も必要となります。
青色申告を受けるメリットとデメリットについて次の章で解説します。
2、青色申告の節税メリット
青色申告をするべきメリットは4つあります。
- 青色申告特別控除が受けられる
- 30万円未満の購入資産を経費にすることができる
- 今年の損失を来年以降に繰り越すことができる
- 家族に支払った給与を経費にできる
青色申告特別控除が受けられる
青色申告の最大のメリット。それは「65万円の青色申告特別控除」が受けられることです。
65万円の特別控除?それがメリットなんですか?
所得税は、1年間で生じた所得に対してかかります。
事業所得が100万円であれば100万円に対して税金が計算され、1000万円であればその1000万円に対して税金が計算されます。
そのため、所得が大きいほど計算される税金の額も大きくなります。
利益がいっぱい出ると、それだけ税金も多くなるということですね・・・経費を使うにしてもお金が減ってしまう。
そこで、この「65万円の特別控除」が威力を発揮するんだ。
特別控除とは、無条件に利益から65万円を差し引けるということです。
利益の計算式は次のとおりです。
売上-経費=利益(所得)
経費が増えることで利益が低くなります。経費をたくさん払えば利益が減って税金も減りますが、支払った分のお金が減ります。
この65万円控除を利用すれば、次のような計算式が成り立ちます。
売上-経費= 利益 -65万円 = 所得
青色申告をすれば何もしなくても65万円を利益から引くことができるため、この「65万円控除」は青色申告を受ける最大のメリットといえます。
税金計算上、利益からさらに65万円を引くことができる。つまり、65万円の経費を支払ったのと同じ効果があるんだよ!
しかし、青色申告でも以下のような場合は控除額が小さくなります。
65万円控除ではないケース
- e-taxを利用しない場合 → 55万円控除
- 簡易帳簿の場合 → 10万円控除
- 事業規模でない不動産所得の場合 → 10万円控除
65万円控除は「青色申告+e-tax利用」が必須ということですね!
30万円未満の購入資産を経費にすることができる
青色申告では、30万円未満で購入したものを一括で経費として落とすことができます。
自分でお金を出して買ったのに一括で経費に落ちないんですか?
減価償却は知っているかな?10万円以上で購入したものは一括で経費にならず、減価償却として何年かに分けて経費化するルールがあるんだよ。
青色申告なら、30万円まで上限がアップするから節税の幅がグッと広がるよ。
例えば、15万円のパソコンを購入するとします。15万円を一括で払った場合、一括で経費として落とすことはできません。お金を払ったんだから経費になるのでは?と思われた人もいると思います。
所得税法の規定で10万円未満は一括で必要経費に算入することができます。一方、10万円以上の場合は「減価償却資産」として何年かに分けて「減価償却費」として経費化しなければいけません。
備品等の購入は10万円までしか一括で経費にならないんですね。
先ほどの15万円で買ったパソコンも買った年に15万円が経費になるのではなく、
4年(48か月)の月割りで経費になっていくというわけです。
青色申告の特典で、10万円未満という上限が30万円未満まで引き上げられます。
つまり、青色申告の場合は30万円未満まで一括で経費にすることができるのです。
その結果、節税の幅が広がり税金を少なくすることができます。
上限が30万円まで増えるのは大きいですね!
今年の損失を来年以降に繰り越すことができる
前述したとおり、所得税はその年の所得に対して課税されます。
しかし事業開始した当初は、思うように結果が出ず赤字になることがあります。
青色申告では、この損失(赤字)を来年以降3年間繰り越すことができます。
赤字を3年間繰り越す?
赤字となった年の翌年はすごく利益が出たとするよね。所得に対して課税だから、利益が出た分税金を払わなければいけない。
前年の赤字と翌年の利益を合算できれば税金が少なくなるのに・・・
そう思うよね。そこで、「赤字(純損失)の繰越控除」が有効なんだ。
例えば、赤字になった翌年以降で毎年事業の利益が出ると、通常は毎年その利益に対して税金が課されます。
しかし、赤字になった年が青色申告の場合、その赤字分を翌年以降に持ち越すことができます。利益が出た年は、前述のように利益から赤字分(損失)を差し引いて税金計算することができます。
つまり、赤字が良く年以降の黒字(利益)と相殺されるため、税金を少なくすることができます。
家族に支払った給与を経費にできる
奥さんに事業のお手伝いをしてもらうため、給料を払おうと思っています。
家族を従業員にして給料を払うんだね。家族の給料は、条件に合わないと経費にならないから注意してね。
白色申告では、原則として家族へ支払った給料は事業経費にはなりません。(専従者控除という制度はあります)
その理由は、事業者と配偶者や同居家族の「お財布は同じ」と税務署は見ているからです。
例えば、奥さんにお給料を払ったとします。
支払ったお金は奥さんの預金口座に振り込んだとしても、結局は家庭の生活費に充てられるのが普通です。つまり、税務署は事業者自身が家庭にお金を入れるのと、同居家族に支払うのは実質同じと見ているのです。
ということは、青色申告の特典が「家族給与を経費にできる」ということですね!
正解!だいぶ青色申告のことを理解できてきたね。
青色申告では、一定の届出をすれば、配偶者や家族への給料を経費にすることができます。
具体的には「青色専従者給与に関する届出」を税務署に届出します。
この届出をすることで「家族が専従者(従業員)として事業主の仕事を手伝うため給与を払います」ということを税務署に通知します。
家族への給与を経費することは節税対策でとても有効です。青色申告を受けるうえで大きなメリットといえるでしょう。
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3、青色申告のデメリット
経理の知識や手間が増える
青色申告の65万円控除を受けようとする場合、「複式簿記による帳簿」を準備しなければいけません。税理士に依頼しない場合は、その帳簿を自身で作成することになります。
また確定申告の際には、貸借対照表や損益計算書を提出しなければいけません。
青色申告をするには帳簿が絶対必要ということか。エクセルで売上と経費を集計するだけではだめですか?
エクセルの「集計」だけでは複式簿記による帳簿とは言えない。残念ながら、帳簿がないと65万円控除は受けられないよ。
では、帳簿はどのように準備するのでしょうか。
複式簿記による帳簿を用意するためには会計ソフトを利用する必要があります。
会計ソフトは、総勘定元帳、売掛帳、買掛帳等の帳簿や、貸借対照表、損益計算書等を作るためのソフトです。
会計freee、マネーフォワード、弥生会計といったソフトがあります。
この会計ソフトに領収書、売上・経費などの情報を入力することで帳簿を作成します。
ということは会計ソフトで頑張って帳簿を作るしかなさそうですね。
クラウド会計がオススメだよ。自動で入力できるので使いやすいと思うよ。インストール型のソフトも良いけど、仕訳を自分で入力しなければいけないから大変かも。
昔に比べて会計ソフトが発達し、会計があまり分からなくても帳簿を作ることはできます。また、クラウド会計ソフトは、ソフトが自動で集計してくれますのでカンタンに作成できます。ただし、会計ソフトでの集計結果が正しいかどうかの判断は、事業主の責任です。そのため、良い悪いの判断ができるよう簿記の専門知識をある程度持っておく必要があります。
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4、まとめ
この記事では、青色申告と白色申告の違い、メリットやデメリットについて解説しました。
具体的には次の4つのメリットがありました。
青色申告のメリット
- 青色申告特別控除が受けられる
- 30万円未満の購入資産を経費にすることができる
- 今年の損失を来年以降に繰り越すことができる
- 家族に支払った給与を経費にできる
事業を営むうえで、税金は避けては通れません。事業を長く続けるためには節税で税金を抑えることが大切です。青色申告は白色申告と比べて、特別控除や経費の特例など税金を減らすための特典が多数あります。そのため、青色申告は欠かせません。
帳簿の備付け、貸借対照表や損益計算書等の準備は大変ですが、ぜひ青色申告をするようにしてくださいね。