この記事では、個人事業で建設業、リフォーム業、職人さんなどの建設関係を営む方や一人親方に向けて、屋号の決め方について税理士が解説しています。
税理士のざいりです。
本業では、税理士として個人事業主の開業や融資のお手伝いをさせていただいています。お客様からよく受ける相談をまとめましたので、ぜひご参考にどうぞ!
この記事がオススメな人
- 個人で建設業を経営されている人
- 屋号を付けるか悩んでいる人
- 屋号の決め方を知りたい人
会社を独立して建設業を個人事業で始めようと思うのですが、屋号が決まらなくて。建設関係の屋号でおすすめの決め方はありますか?
屋号の付け方は開業した人みんなが悩むところだよ。建設業や一人親方の屋号のおすすめの決め方があるから、今回はポイントを厳選して解説しよう。
個人事業を営むうえでの名称である「屋号」。建設業で開業した個人事業主が最初に悩むところです。
事業を始める際、税務署に提出する開業届にも屋号を記載する箇所がありますし、取引先やお客様に配る名刺にも屋号を載せることになります。
屋号とは、個人事業を行う上で使用する名称のことをいい、株式会社でいう会社名に近いイメージです。
個人事業の場合、屋号が必ず必要というわけではなく、個人名(本名)をそのまま使ってもまったく問題ありません。
しかし、屋号はあった方が、事業内容が相手に伝わりやすいなどの理由からビジネス上で有利な点が多いです。さらに将来的に法人化をするうえでもメリットがあります。
とは言っても、どんな屋号がいいの? そんな疑問を持つ人は多いのではないでしょうか。
頑張って付けた屋号でも、
「なんでその屋号にしたの?」
「そんな屋号の人には仕事をお願いしたくない」
「他の屋号にすれば良かったのに」
と周りから言われかねません。
ではどのような屋号にすれば良いのか?
この記事では、建設業を営む個人事業主や一人親方に向けて、おすすめの屋号の決め方について税理士が詳しく解説しています。
屋号の付け方に悩んでいるなら、ぜひ参考にしてくださいね。
屋号とは?
屋号は義務ではない
屋号とは、個人事業主がビジネスを行う上で使用する名前(名称)のことをいいます。
株式会社や合同会社などの法人でいう会社名に相当します。
つまり、「個人事業主のビジネス上の名前」が屋号です。
法人の場合、名称(会社名)のことを商号といい、商号は必ず付けなくてはなりません。
法人を設立した場合は、法律で商号を登記しなければならない決まりになっているからです。
一方で、個人事業主の屋号を付けるかどうかは任意となっています。
屋号は任意であるため、建設関係のお仕事を営む個人事業主の中には、個人名で仕事をしている方もいます。
屋号とは?
個人事業主がビジネスを行う上で使用する名前(名称)のこと。
法人の名称(商号)の場合、必ず付けて登記をしなければいけないが、個人事業主の名称である屋号は付けることも登記も任意です。
では個人事業で行うのであれば、屋号が必要ないかというとそんなことはありません。
むしろ建設業で個人事業をするうえでは、屋号は付けるべきです。
屋号を付けることによって、次のようなメリットがあります。
仕事に役立つメリットがたくさんありますので、ぜひ屋号を付けることをおすすめします。
屋号を付けるメリット
- 事業内容が相手に伝わりやすく仕事がやりやすい
- お客様からの信用を得られやすい
- 法人成りの際に法人名をスムーズに決めやすい
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屋号はなくても問題ないけど、あった方がビジネスで役に立つということですね!
どこで屋号を使うか?
建設業の屋号は、次の場面で使用します。
・開業届
・確定申告書
・名刺
・取引先に出す請求書
・領収書
・銀行口座(屋号名義の口座を作ることができます)
・契約書関係
取引相手との書類の中で使用することがほとんどです。
そのため、相手から不審に思われない屋号にすることをおすすめします。
また一度決めた屋号はいつでも変えることができますが、取引相手からの混乱を招く可能性があります。決めた屋号は基本的に変えないつもりで屋号を考えましょう。
屋号は登記しているわけではないからいつ変えても大丈夫だよ。ただし、取引先への連絡や契約関係で手間がかかるかもしれないので、なるべく変えない方が良いね。
建設業、一人親方の屋号の選び方 ポイント5選
建設業の屋号の選び方のポイントには次の5点があります。
建設業の屋号の選び方のポイント
- 業務内容が伝わるか?
- 信頼できるか?
- 覚えやすいか?
- 法人で使用できない文字を避ける
- 画数で決める
次章でひとつずつ詳細に解説していきます。
業務内容が伝わるか?
屋号を決めるうえで最も大切なポイントは、「屋号から相手に事業内容が伝わる」ことです。
個人事業主は、株式会社のように登記ないため、仕事相手を探している相手がどのような仕事をしていて、何者なのかを把握することができません。
特に建設業で一人親方の場合、細かく専門性が分かれています。そのため、得意分野である事業の名称を屋号に入れることをおすすめします。
建設業の屋号には、次のようなものがあります。
・〇〇建設
・〇〇リフォーム
・〇〇土建
・〇〇電気
・〇〇土木
・〇〇建築
・〇〇内装
・〇〇塗装
・〇〇工業
・〇〇興業
いかがでしょうか?
どういう事業を行っているのか、屋号からなんとなく想像できますよね。
事業内容が分かりにくい屋号でも、どのような事業を行っているかを相手に説明すれば仕事の内容を伝えることができます。
しかし、相手も暇ではありません。よっぽど意気投合する場面でなければ、素性も分からない相手の話を聞くことはほぼないでしょう。
そこで事業内容が分かりやすい屋号があると便利です。
例えば「〇〇電気」なら電気関係の仕事ができることがひと目で伝わります。もしちょうど相手が電気関係の職人を探していたら、声をかけてくれるかもしれません。
私は税理士として建設関係の法人を10社以上お付き合いさせていただいていますが、ほとんどの会社が協力会社や職人さんを探しています。元々の協力会社がいますが、納期や協力会社の忙しさから、協力会社にお願いできないケースがどこの会社にも起こっています。
そんな中で相手が「〇〇電気」と書かれたあなたの名刺を見たらどうでしょうか?
電気関係を探していたら、すぐに電話したくなりますよね?
事業内容が分かりやすい屋号にすることで、仕事をもらえる可能性が高まります。
事業内容が屋号から伝わるって大事なんですね!
信用できるか?
お客様から仕事をうけるために、信用はかかせません。
個人事業主は株式会社と違って登記がないため、素性を第三者が確認することができません。そのため、信用を得るためにも屋号の存在はとても大きいです。
先ほどの〇〇電気という屋号の例で考えてみましょう。
もし電気関係の取引先を探している人がいたとして、次のうちあなたならどちらの方に仕事をお願いしますか?
・山田太郎さん
・〇〇電気の山田太郎さん
やっぱり「電気」って付いてる方にお願いした方が無難な感じがしますね。
屋号がある方がなんとなく信用できそうですよね。
電気関係に詳しそうとか、電気工事の専門の人とか屋号からそのようなイメージを持つことができます。
この屋号のイメージが第一印象での信用につながりやすいのです。
そのため、奇抜な屋号やビジネスに向かない屋号は避けるようにしましょう。
例えば、「パーフェクトヒューマン山田」といった屋号を付けた場合に興味を持たれるかもしれませんが信用される可能性は低いです。
ビジネスは遊びではなく真剣です。そのため、信頼を持たれるためにもウケを狙う屋号よりはマジメな屋号を付けることをおすすめします。
ビジネスが信頼関係で成り立っている。だから信用を持ってもらえる屋号にすることは本当に大切だよ。
覚えやすいか?
屋号は相手の印象に残るような覚えやすい名前がおすすめです。
覚えやすい屋号の場合、取引先の記憶に残るためリピートや別の現場への紹介につながりやすいです。
一方で、どんなに自分が良いと思う屋号でも、取引先やお客様に覚えてもらえない屋号は事業に向いていません。覚えていない人について、仕事の依頼や知り合いへの紹介はできませんよね?
覚えにくい屋号とは次のようなものがあります。
・長すぎる
・読めない
・英語で発音が分からない
仕事のリピートや他現場への紹介を増やすためにも覚えやすい屋号を付けるように心がけましょう。
読めないと誰かに伝えることもできませんしね。誰でも読めて、信頼を持ってもらえる屋号にしようと思います!
法人で使用できない文字を避ける
建設業の場合、事業規模や取引先、現場の関係で個人事業から法人になる人が多いんだ。だから最初から法人化を見据えて屋号を考えることをおすすめするよ。
最初は個人事業として事業をスタートを切りましたが、事業が軌道に乗って売上・利益が出るようになると、いずれは個人事業を法人化(法人成り)します。
法人化(法人成り)とは?
個人事業主として行っていた事業を、株式会社などの法人という組織に引き継ぐこと。
法人成りといいます。
法人化しても事業内容は同じですが、個人と法人は別人格とされているため、新たに法人の名称(商号)を決めなければいけません。
個人事業の屋号がある場合は、屋号をそのまま法人の名称にすることができます。例えば、個人事業で「〇〇土建」という屋号だったとしたら、そのまま「株式会社〇〇土建」にすることが可能です。
もちろん個人事業の屋号とは別の法人の名称にすることもできますが、仕事のつながりや取引先への連絡を考えると個人事業の名称を引き継いだ方がスムーズです。
ただし、法人の名称には使えない文字があるため、法人化のことを考えて屋号には法人で使えない文字を避けた方が良いでしょう。
なぜなら、屋号に法人で使用できない文字が含まれている場合は、そのまま法人に名前を引き継ぐことができないからです。
法務省のホームページでは、商号(法人の名称)で使用できる符号は次のように説明されています。
1 商号の登記に用いることができる符号
(1)ローマ字(大文字及び小文字)
(2)アラビヤ数字
(3) 「&」(アンパサンド)
「’」(アポストロフィー)
「,」(コンマ)
「-」(ハイフン)
「.」(ピリオド)
「・」(中点)※(3)の符号は,字句(日本文字を含む。)を区切る際の符号として使用する場合に限り用いることができます。したがって,商号の先頭又は末尾に用いることはできません。ただし,「.」(ピリオド)については,省略を表すものとして商号の末尾に用いることもできます。
※なお,ローマ字を用いて複数の単語を表記する場合に限り,当該単語の間を区切るために空白(スペース)を用いることもできます。
法人の名称で使用できない文字は次のようなものがあります。
法人の商号で使用できない文字の例
@ ! ? () _ など
建設業の場合、節税の面、現場や元請けからの要求などから法人化することが多いです。そのため、法人化を見据えた屋号を付けましょう。
記号を使わなければ問題なさそうですね。
画数で決める
屋号の候補が何種類もあってどれも甲乙つけがたい。そんな場合は、最終的に画数診断で決めるのもひとつの手です。
お子さんの名前を決めるとき、画数診断サイトや占いなどに画数を調べて決めるように、屋号、会社名にも診断サイトがあります。
占いのため、結果が絶対とは言い切れません。参考程度に受け取るくらいがちょうどいいです。
どうしても決められないときの最後の手段っていう感じですね。
屋号が決まった後の準備
開業届で屋号を登録する
屋号が決まったら、開業届を税務署に出して屋号を登録しましょう。
開業届は国税庁のホームページ(個人事業の開業届出・廃業届出等手続)からダウンロードすることができます。
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屋号名義の口座を作成する
屋号を持っていると、金融機関によっては、銀行口座の名義に屋号を入れることができます。
屋号名義の口座(屋号付き口座)は、お客様からの信用面が得られやすいなどのメリットがありオススメです。
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まとめ
この記事では、建設業を個人事業で営む方や一人親方の屋号の付け方について解説しました。
建設業の屋号の選び方のポイントには次の5点がありました。
建設業の屋号の選び方のポイント
- 業務内容が伝わるか?
- 信頼できるか?
- 覚えやすいか?
- 法人で使用できない文字を避ける
- 画数で決める
屋号は個人事業を営むうえでの事業主の名前であり、ビジネス上の顔でもあります。
屋号によって、仕事の受注や元請さん、取引先、お客様との付き合いが変わってくる可能性もあります。
それくらいビジネスにおいて屋号は重要な役割を持ちます。
この記事で紹介したポイントを参考に、納得いく屋号を付けてくださいね!
経営、銀行融資、会社設立に関する記事はこちらのサイトに掲載しています。
ぜひ参考にしてみてください。