この記事では、年収500万円の会社員(サラリーマンやOL)の1年間の手取りとかかる税金について税理士が解説します。
税理士のざいりです。
本業では、税理士として個人事業主の開業や融資のお手伝いをさせていただいています。お客様からよく受ける相談をまとめましたので、ぜひご参考にどうぞ!
この記事がオススメな人
- 年収500万円の給料がほしい方
- キャリアアップ・転職を考えている方
- 社会保険料や税金がどれくらいかかるかを知りたい方
年収500万円ってどうですか?友人と年収の話をしてうらやましくなっちゃって。僕も年収500万円なら買いたいものいっぱい買えるなー。
年収500万円と言っても、その500万円すべてのお金がもらえるではないから注意が必要だよ。税金や社会保険がかかってくるし。
そっか。年収500万円の手取りってどんなものなのかな?
サラリーマンの年収目標の目安となりやすい年収500万円。
年収500万円と聞いて、
「年収って何のこと?」
「手取りはどれくらいだろう?」
「税金はどれくらいかかるの?」
こんな疑問を持たれる方は多いのではないでしょうか。
年収500万円とはいっても、すべてがお金としてもらえるわけではありません。税金と社会保険が引かれて、手取りは約400万円になります。
100万円もとられるの!?
つまり年収500万円の20%である100万円は、何もせずとも手元から無くなってしまうのです。「年収500万円の手取りが400万円」と聞いて、多い、少ない、どちらに思いますか?
私は税理士になる前、会社員として働いていたとき、給与明細を見て
よく分からん税金と保険がめっちゃ取られてる!
手取り少な!
とよく思っていました。
この記事では、年収500万円のサラリーマンの手取りが400万円になる原因を税理士が解説します。キャリアアップや転職でも使える考え方ですので、ぜひ参考にしてくださいね。
会社員の年収の手取りとは?
年収とは、個人が1年間で得られた収入合計のことをいいます。
サラリーマン、OLとして会社から給与をもらっている場合は、毎月のお給料とボーナスの年間合計額が年収になります。
なお、年収額は源泉徴収票で確認できます。源泉徴収票とは、会社が支払った給与や税金などの1年間の金額をまとめたもので、年末調整の後に配布されます。下図の赤枠部分の「支払金額」が年収金額です。
年収の計算のもとの「給与の金額」は、健康保険、厚生年金、雇用保険などの社会保険料や所得税・住民税などが引かれる前の給与の金額で「給与額面」などと呼ばれます。
一方、「手取り」とは実際に受け取る金額です。会社から銀行口座に振り込まれる金額、または現金を手渡しで受け取るお金をいいます(「手取り金額」と言われたりします)。「給与額面」の金額から社会保険や税金が引かれるため、額面に対して実際にもらう金額が少なくなっているのです。
年収とは?
個人が1年間で得られた収入合計のことで、会社員の年収は、毎月の給与とボーナスの金額の1年間の合計額をいいます。
給与とボーナスはそれぞれ額面の金額です。
手取りとは?
実際に振り込まれた(受け取った)給与やボーナスの金額をいいます。
額面の金額から、社会保険料、所得税、住民税を差し引かれた後の金額です。
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年収から手取りまでに引かれるものとは?
年収から手取りまでの間に引かれる税金などは次のようなものがあります。
- 健康保険
- 加入者本人や家族が、病気やケガによる休業、出産、死亡によって、想定していない多額の出費や収入が無くなるなどの場合に、医療給付や手当金により加入者の生活を安定させる制度。毎月の給与の金額で天引きされる金額が決められています。
- 厚生年金保険
- 公的年金制度のひとつで、厚生年金は2階部分にあたります。年金をもらうときには国民年金に上乗せで受給できます。健康保険と同じく、毎月の給与の金額によって、徴収される金額が決まっています。
- 雇用保険
- 失業や病気などで休職して収入を失った場合に、加入者の生活安定や再就職を支援するための制度。令和3年度は、雇用保険料率3/1000~4/1000(業種により異なる)が給与から天引きされます。
- 所得税
- 個人の所得に対してかかる税金。個人の1年間の所得から所得控除(生命保険料控除、配偶者控除など)を引いた残りの金額(課税所得)に対して税金がかかります。所得が増えれば税率が上がります(累進課税制度といい、税率は5%~45%)。
- 住民税
- 個人の所得にかかる税金でお住いの都道府県、市町村に支払います。都道府県向けは都民税・道府県民税、市町村向けは市町村民税があり、税率は10%+α(所得割10%+均等割)がかかります。
年収500万円の手取りはいくら?
年収500万円の会社員の手取り金額はどれくらいだと思いますか?
手取り金額は、
1年間の手取り 約387万円
毎月の手取り 約31万円
になりました。
社会保険料や所得税、住民税を計算すると次のようになります。なお、社会保険の加入状況、扶養状況によってはシミュレーションが変わりますのでご注意ください。
給料から引かれるものの内訳
①社会保険関係:75万1500円
②所得税 :13万5300円
③住民税 :24万2800円
合計①~③ :1,129,600円
具体的な計算方法を次の章で解説していきます。
年収500万円の社会保険と税金の計算方法
健康保険・厚生年金
年収500万円の場合、ボーナス無しで月41万6000円の給与額面になります。
東京都の社会保険料率表に当てはめると、毎月の給料で徴収される金額は次のようになります。
・健康保険23,862円(40歳未満の方は20,172円)
・厚生年金37,515円
下図は令和3年の東京都の健康保険・厚生年金保険の保険料額です。健康保険料、厚生年金保険料の徴収金額は、毎月のお給料の金額(標準報酬月額)をもとに決められています。
引用:『令和3年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表』
年収500万円の月給である41万6千円は、標準報酬41万円(395,000~425,000)の枠に該当するため、健康保険23,862円(40歳未満の方は20,172円)、厚生年金37,515円が徴収される金額となるのです。
- 健康保険・厚生年金保険の計算方法
- 毎月の給与の額面金額(通勤手当等も含む)をもとに、お住いの都道府県の保険料額表に沿って金額が決められています。
社会保険ってけっこうかかるんですね。でも必要なものだから仕方ないか。
雇用保険
一般の事業の場合の令和3年度の雇用保険料率は3/1000です。
毎月の給与額面の3/1000で計算されるため、41万6000円×3/1000=1,248円が給与から引かれます。
令和3年度の雇用保険料率は、厚生労働省のホームページで公開されています。
事業の種類に応じて、労働者が負担する保険料率が3/1000~4/1000となっています。
引用:厚生労働省『令和3年度の雇用保険料率について』
社会保険関係の金額をまとめると、年収500万円では額面から手取りまでに差し引かれる金額は次のようになります。
年収500万円の会社員が手取りまでに引かれる社会保険料
(6万1377円+1,248円)×12ヶ月=75万1500円
※会社が厚生年金に加入している場合です。社会保険の加入状況によって異なります。
- 雇用保険料の計算方法
- 雇用保険料率は、事業の種類によって 3/1000~4/1000です。
給与額面(通勤手当等も含む)に保険料率をかけて雇用保険料の金額を計算します。
雇用保険は思ったより少なく済むんですね。
所得税
所得税は次の計算方法によって計算していきます。
①給与額面ー給与所得控除額=給与所得
②給与所得ー所得控除=課税される所得
③課税される所得×所得税率=所得税
①の給与所得控除とは、サラリーマンの実質の必要経費として認められている金額です。
給与所得控除額は次の表のように給与収入金額に応じて金額が決まっていて、給与額面から該当する給与所得控除の金額を差し引きます。
引用:国税庁『No.1410 給与所得控除』
年収500万円の会社員は給与等の収入金額3,600,001円から6,600,000円までの赤枠に該当します。
計算すると給与所得控除の金額は144万円(=500万円×20%+44万円)になるため、所得税の計算式にあてはめると、①の給与所得は356万円となります。
①給与額面500万円ー給与所得控除額144万円=給与所得356万円
②給与所得ー所得控除=課税される所得
③課税される所得×所得税率=所得税
②の所得控除とは、前章で解説した雇用保険等の社会保険料の控除、配偶者が扶養の場合に受けられる配偶者控除、基礎控除などが該当します。今回のシミュレーションでは、前章で求めた社会保険料控除75万1500円、基礎控除48万円の合計123万1500円で計算します。
①給与額面500万円ー給与所得控除額144万円=給与所得356万円
②給与所得356万円ー所得控除123万1500円=課税される所得232万8500円
③課税される所得×所得税率=所得税
所得税は、次の税額表で課税される金額に応じて税率が変わります。
引用:国税庁『No.2260 所得税の税率』
課税される所得金額が232万8500円の場合は、次の赤枠に該当します。
次の計算式で求めることができます。
①給与額面500万円ー給与所得控除額144万円=給与所得356万円
②給与所得356万円ー所得控除123万1500円=課税される所得232万8500円
③課税される所得232万8000円(千円未満切り捨て) ×所得税率10%-9万7500円=所得税13万5300円
まとめると、年収500万円の所得税は月の金額になります。
年収500万円の会社員が手取りまでに引かれる所得税
13万5300円
- 所得税の計算方法
- 次の計算式によって所得税を計算することができます。
①給与額面ー給与所得控除額=給与所得
②給与所得ー所得控除=課税される所得
③課税される所得×所得税率=所得税
所得税は年収によって税率が変わるのか。年収が高ければ高いほどすごい税金になりそうですね。
住民税
住民税は、所得に応じて計算する所得割と、都道府県・市区町村に住んでいるだけで課税される均等割の2種類の合計で納税額が計算されます。
都道府県、市区町村ごとに少し税率が違うため、詳細はお住いの自治体のホームページでご確認ください。なお、東京都の所得割、均等割は次のようになっています。
- 所得割:税率10%(都民税4%、区市町村民税6%)
- 均等割:5千円(個人都民税1500円、個人区市町村民税3500円)
所得割は次のような流れで計算していくことが東京都のホームページで公開されています。前年の収入金額からスタートして所得割の金額を計算した後に、均等割額を追加した金額が最終的に納めるべき住民税の金額となります。
引用:東京都主税局『個人住民税』
住民税は次の計算方法によって決まります。
①給与額面ー給与所得控除額=給与所得
②給与所得ー所得控除=課税される所得
③課税される所得×所得割の税率+均等割=住民税
所得税の計算と流れが似ていますよね。所得控除で若干の違いはありますが、基本的な計算の流れは所得税の場合と同じです。
住民税の計算においては、基礎控除の金額が43万円になりますので、今回のシミュレーションでは所得控除の金額が118万1500円(社会保険料控除75万1500円+基礎控除43万円)になります。
①給与額面500万円ー給与所得控除額144万円=給与所得356万円
②給与所得356万円ー所得控除118万1500円=課税される所得237万8500円
③課税される所得 237万8000円(千円未満切り捨て)×所得割の税率10%+均等割5千円=住民税24万2800円
年収500万円の会社員が手取りまでに引かれる住民税
24万2800円
※住民税は令和3年分の所得をもとに令和4年に納税します。そのため、令和3年に年収から引かれる住民税は令和2年の所得をもとに計算された金額です。
- 住民税の計算方法
- 次の計算式によって所得税を計算することができます。
①給与額面ー給与所得控除額=給与所得
②給与所得ー所得控除=課税される所得
③課税される所得×所得割の税率+均等割=住民税
住民税は、翌年に1年遅れで支払うから注意しないといけないよ!
まとめ
今回のシミュレーションでは、年収500万円の会社員は次のようなものが徴収されて、最終的に残る手取りは1年間で387万円になりました。
年収 | 500万円 |
(引かれるもの) | |
健康保険・厚生年金・雇用保険 | ▲75万1500円 |
所得税 | ▲13万5300円 |
住民税 | ▲24万2800円 |
(残るもの) | |
手取り金額 | 約387万円 |
今回は簡易シミュレーションのため、社会保険の加入状況や所得控除の状況によって税額は変わりますのでご了承ください。
手取り額を増やすためには年収を上げることが大切です。
あなたがほしい年間の手取り額から逆算すると必要な年収はいくらでしょうか?
この逆算した考え方が転職やキャリアアップの賃金条件を決める際に役立ちます。ぜひ活用してみてくださいね。